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J (ジェイ)の物語」

​第4部
4.不穏

 空はどんよりしていた。
(せめて晴れていたら良かったのに)

 今日は公判の日。当然だが、昨日からジェイは落ち着かなかった。仕事をしていてもどこか上の空。休んでもいいという大滝部長からの話もあったが、休むのは怖かった。

 すでに花も含めて西崎とは話を固め、その内容を証言として提出していた。

「じゃ、あなたはいきなり切りつけられた。宗田さんは咄嗟に庇って傷を負ったけれど、合気道の心得があるから体が勝手に動いて相手を投げた。あっという間の出来事だったから顔を確認できてはいなかったけれど、その後で顔を見たら間だった。これでいいのね?」
「はい」

西崎は溜息をついた。

「これ、必ず後で自分の首を絞めることになるわ。覚悟しておかないと」
「はい」
「もう一度確認したいの。性的暴行を受けたこと、公表は拒否なのね?」
「はい、したくないです。それで言い争うことになるのはいやです」

 花は口を挟まなかった。ジェロームの決断だ。
(その代り、出来る限りお前を守るからな)


 そして、蓮も花もいい解決策を見出せないままとうとうこの日になってしまった。相談した相手は口を揃えて言った。

「そりゃ無理だ。傷害って言っても軽症だし、クビになった後で会社の前だって言ったよな。なら向うの弁護士は怒りによる一時的な錯乱で犯行に走ったって言うだろう。それに絶対本人はしおらしく謝罪してくるはずだ。重い刑なんか期待できるわけが無い。レイプ未遂やストーカー行為を前面に押し出せば変わるかもしれないけどな。少なくとも接近禁止命令は出たかもしれない」

 何度も弁護士の西崎はジェイの説得を試みた。

「ね、訴えましょう。この後ずっと怯えて暮らすよりいいでしょう? 何も無いかもしれない。けれどストーカーってそんな簡単なものじゃないのよ。病気だと思って。このままじゃ次の被害を待つことになる」

 ジェイは折れなかった。職場を失いたくない。仲間を、家族を失いたくない。性癖を知られたくない……

「ジェイ、俺はもう構わない。お前を守れるのなら関係を公表してもいい。俺にはそれだけの覚悟がある。もし互いに職を失うなら一緒に一から考えて行こう。もし訴えない理由の中に俺とのことが入っているのなら、頼むからそんなことと自分を引き換えにするな」
「違うよ、違うんだ。蓮が立場を失くすの、それ絶対にイヤだ。でもそれだけじゃない……俺、花さんにだけは何も知られたくないんだ……」

 蓮とは違う意味で、ジェイにはもう花無しの人生は有り得なかった。時に辛辣でも、言うことは真正面から受け止めてくれて、いつも気持ちを分かろうとしてくれた。
 蓮以外で心を許せるたった一人の友だち。哲平を兄のように慕うのとはまた違う感覚。

「花が大事か」
「うん。俺、花さんと仕事やっていきたい。蓮と一緒にいたいのと同じに、花さんとも一緒にいたい。楽なんだ、気持ちが」


 公判に出ずに済むことを知った時にはホッとした。全部弁護士に任せて済ませられる。あの顔を見なくて済む。西崎に頭を下げて、「よろしくお願いします」と全てを託した。

 花は次々と仕事を言いつけるし、相変わらずみんなも雑務を頼んだ。考える時間を与えたくない。みんなに出来ることはそれくらい。

 今日のジェイは用を言いつけられるたびにホッとした顔をした。事件の詳細を知る者は少ない。みんなが知っているのは、なぜかクビになった腹いせの対象にジェイが選ばれてしまったこと。それを証明できないから実刑にならないだろうということ。釈放されればまたジェイが狙われるかもしれないということ。誰も何も言わず聞かず、ただジェイの肩を叩いた。

 


 3時過ぎ。花と二人部長室に呼ばれた。西崎がいた。

「判決は多分2月中に出るわ。ほとんど言ってた通りの内容。周りのいた人たちの証言も、あっと言う間の出来事だったとか、誰かを狙っているようには見えなかったとか。本人は深々と謝罪していたわ、まるで謝罪の見本みたいに涙まで流して。被害者の方に大変申し訳ないことをしたって」

 

裁判官は先方の弁護士の話に信憑性を感じただろうとのこと。
会社をクビになって呆然とした日が続き、ある日突然怒りに我を忘れ包丁を持って飛び出した。
会社の前まで行って、思わずビジネススーツの男に切りつけたが、その相手が誰かは全く知らなかった。
我に返った時に花にいきなり体を放り投げられたので、どの段階で傷を与えたのか分からない。
自分のしたことに気がついて愕然とした。

 

「包丁も買って来た物じゃなかったから計画性があったとは認められないし、執行猶予で終わる。イヤな言い方だけど、もう一度何か罪を犯して実刑になることを待つってことね」

 

 

 覚悟していたことだった。けれど相田は出て来る。

「ジェローム、本格的に合気道教えるぞ。いいな?」

青い顔でジェイは頷いた。
 免許を取っていて良かった。マンションに移っていて良かった。危険な場所は少ない。飲み会があれば必ず蓮と帰る。安全な場所は家と会社。人の多いところ。もう同じ手を相田は使わないだろう。

 それからはただただ必死に仕事にしがみついた。夜は、蓮に。
「なるべく俺から離れるな」
狂おしいほど自分を求めるジェイに何度も蓮は囁いた。気を失うほどに抱いた。

 西崎が言っていた。ああいう連中が行動を起こすのは早いのだと。独占欲と恨みと。相田が増幅した怒りを向ける先は、やはりジェイだ。


 退社後は花と行動した。道場に連れて行かれ、遅くまで指導を受ける。時には真理恵が稽古をつけてくれた。
 普段にこにこと優しい小柄な真理恵は、道場に入ると人が変わった。
(花さんより厳しいし怖い……)
その後は真理恵の手料理をご馳走になる。初めは遠慮がちにしていたが、家族同然に扱ってくれるから打ち解けるのは早かった。

「真理恵さんの料理、俺好きです!」
「わ、ありがとう! 花くん、あんまり言ってくれないの。だから作り甲斐無くて」
「え、正月に遊びに来てくれた時、べた褒めでしたよ!」
「ジェロームッ! 余計な事、言うな!」
「ふぅん、そうだったんだぁ。花くん、大好き!」
「うるさいなぁ、今俺、食ってんの!」

真理恵が抱きついたからジェイも慌てて下を向いた。
(仲いいんだなぁ)
夫婦なんだから当たり前なのだけれど。二人がほのぼのしていて、それを見ているのも幸せだった。

 駐車場までの短い距離を花とのんびり歩いた。

「いいんですよ、花さん。まだ釈放されて無いんだし」
「そう言うなよ。俺さ、仕事お前にうんと助けられているよ」
「俺にですか?」
「俺とお前って観点が全く違うんだよな。でさ、お前が俺の気づかないとこを軌道修正してくれてる」
「軌道修正って……」

いつもと違って花がぽつりぽつりと話してくれる。

「スケジュールに『営業に進捗報告』って書き込んでくれたろ? あれ、俺の頭に全然無かった。昨日急いで田中さんのとこに行ったよ。それで今の状況と問題点を報告したらすごく喜んでくれてさ。先方と話す時にリアルタイムで伝えられるし、フィードバックされれば解決にも繋がるだろうって。そこまでやってる他社は少ないから印象も良くなるってさ」
「そうだったんですか。でもあれチラッと花さん、自分で言ってたんですよ。多分忘れちゃったんだと思って書いたんです」
「そうなの? でもお前が書いてくれなかったら結局それは無かったことになるし。やっぱり助かるよ、お前がいてくれると」

息が白い。とても寒いのに、心の中が暖かくなる。

「俺、花さんと仕事出来て嬉しいんです。ずっと一緒にやっていきたいです」
「ありがとな。俺、気難しいの自覚してんだけどお前は根気よく相手してくれるし。友だちとしても最高だよ」

(俺……やっぱり花さんに知られたくない……嫌われたくない)
ジェイは花との関係を大切にしたかった。

 時が過ぎるのが怖いくらい早かった。判決が出るのは1月26日と聞いた。そして今は1月23日。

「家での様子、分かりますか?」

 花は心配で堪らない。食が細くなった。昼もあまり食べず、家に来てもあんなに美味しいと言っていた真理恵の料理を啄ばむように食べる。頬が痩けてきたような。

「朝は俺のところに引っ張り込んで食わせてる」

 蓮も必死だった。食べないどころじゃない、寝てもうなされて飛び起きる。抱いて快感に溺れさせ、やっと眠らせる。家で食べさせているのはほとんどおじやだ。

 会社では喋らなくなった、神経過敏になっている。さすがの砂原でさえ、ポスター剥がしや雑務の手伝いを始めた。怯えの走る顔に砂原の中で後悔が生まれている。ここにいるのは怯えきった子ども。

 みんなもそっとしておくことしか出来ない。誰も相田の名前を出さなかった。

 


そして、判決前夜。

「ジェイ、ほらあんみつ買ってきたぞ。今日のおじやはタラを使ったんだ。俺はこれが好きでさ、お前もきっと気に入ると思うけどな」
「食べてみる」

少なめに注いでスプーンを渡した。

「どうだ?」
「うん、美味しい」

それでも言葉の割に口に運ぶのは少しずつだった。

「あんみつ、食うか?」
「お腹、いっぱいなんだ」

無理して食べても反動が怖い。この前は吐いた。それから無理強いをしていない。

「蓮、俺、蓮の上に乗ってもいい?」

驚いた、ジェイがそんなことを言うのは初めてだ。

「そうしたいのか?」
「うん、そうしたい」

 後ろを解すのは蓮がした。優しく体を撫でながら感じさせてやる。快楽に逃げたいからジェイの声はあっという間に喘ぎ声に変わった。蓮は横たわって、後をジェイに任せた。

 不思議な感覚だ、ジェイが蓮の体を舐めていく。胸で止まり、蓮の飾りを口で弄ぶ。今までに無い快感を蓮も味わう。ジェイが蓮を掴んでそこに合わせて腰を下ろしてきた。自分を咥え込むようにジェイが腰を揺らしながら蓮を求めてくる。

 天井を仰ぎながらゆっくり体を揺らすジェイが綺麗だ。腰を支えてやりながら、自分がイかされそうで耐えていた。胸の飾りを摘み、爪でひっかくと体に震えが走るのを感じた。

  あ……ふぅ  ぅう!  っは!

 苦しげな声が、激しくなる腰の揺らぎの中で一際大きくなっていく…… 蓮がジェイの屹立に手をかけた。背中が反り、中がきつく締まった。

「あぁ   ジェ……だめ……だ、もう……」

 自分が膨れ上がるのが分かる。首を振りながら  れん  れん  と繰り返すジェイが美しくて…… 動きが止まり痙攣が始まる、手の中にジェイの出し続ける精液を受けながら、震えるジェイの締め付けに蓮の頭が白くなり、弾けた…… 胸に倒れ込んだジェイの胸と蓮の胸が連動するように上下していた。

「ジェイ……大丈夫か?  ジェイ?」
「……このまま、寝たい……」
「いいよ、抱いてるから眠れ」
「うん」

 寝息が聞こえるのは早かった。しっかり体が弛緩するのを待ってジェイの体を自分から下ろした。夢を見ていない様子にホッとする。頬にそっと口付けてベッドを下りた。そっと掻き出して温かいタオルで清めた。起きる様子が無いのを確かめてシャワーを浴びる。

 時計はまだ11時にもなっていない。覗くとさっきの姿勢のままだ。眠れないのは、蓮の方だった。2時過ぎ、やっとうとうとし始めた。

 

 次に目が覚めたのは6時前だった。腕にいるジェイの手が自分のパジャマを掴んでいる。茶色の巻き毛に指を潜らせた。

「起きてたのか、起こせばよかったのに」

見上げてくる目に恐怖が宿っていたから抱きしめた。

「会社、行くんだろ?」

声も無く小さく頷いた。

「じゃ、支度を始めよう」

額にキスをした。

「あ! すみません!」

ファイリングしようとした資料が床に広がった。千枝が手伝って拾う。

「大丈夫よ、座ってなさい」

微笑んでページを揃えていく。

「私がやっちゃってもいい?」

すかさず花が口を挟む。
「やってもらえ、千枝さん今ヒマなんだし」
「あら、ご挨拶ね」

 ジェイから回った周知分には変換ミスがいくつかあり、互いに 「多分こうだよな?」 と解読しあった。今までに有り得なかったミスが朝から連発している。見るに見かねて全体に影響の出そうな仕事は花がカバーした。

「4階、行こうぜ、俺喉が渇いた!」

池沢と三途川が花に頷いた。いつもなら必ずオフィスを出る時間をチェックすることもしない。

「俺さぁ、昨日茶碗蒸し挑戦したんだよ。ほら、課長作ってたからさ。あれ、難しいんだな! 驚いたよ、蓋開けたら穴だらけ! 課長の料理レベルって半端ないんだな」
「花さん……今日釈放されちゃうのかな……」
「……そうだな、多分。西崎さんが帰ってきたら分かるよ」
「変なんだ、覚悟してたのに。これだけいろいろ一人にならないように考えてあるのに怖くて。情けなくて……」
「情けなくなんかないよ。俺さ、襲われたことあるって言ったろ? 未遂に終わったけど。あれ、17の時だったんだよ」
「え!?」

「それから男の目がずっと気になってさ、帽子かぶってサングラスして。電車とか隣や後ろに男が来たらすぐ移動してさ。で、マリエにぶっ飛ばされたんだ、ならもっと強くなれって。そん時からマリエが師匠」
「そうだったんですか……」
「俺だって怖かったんだ、だから分かるよ。怖いのは当たり前だ。あれだけやられりゃ当然の反応さ。情けないって思うのもな。なまじ自分が男だからふがいなく感じる」

涙が落ちそうだった。花はなんでも分かってくれる。

「だから辛かったら言えよ。何かあったら課長にも俺たちにも躊躇わずに言うんだ。ちょっと変だって思ったこともな」
「うん……」

 独りになるのが嫌だったジェイは、今は一人になることが怖かった。

 

 


 夕方。部長のオフィスに呼ばれた。部長と弁護士と蓮が座っていた。蓮の顔を見て、ちょっとほっとする。

「結果を先に言うわね。その方がいいものね。執行猶予で釈放されました。もう今頃彼は家に戻ってる」
「そんなに早いんですか!?」
「ええ、手続きは弁護士がやるしね。次の事件を起こさなければ一般人と変わらないし」
「そうですか……」

もう外にいる。会社から出ればどこで会っても不思議じゃない。

「これからのこと。向こうがどの程度のストーカーかによるけど、これまでのことを考えると多分行動は早いわ。だから気をつけるしかない。一人にならないこと。安全な場所にいるように心がけること。安全な場所だとしても、例えばスーパーとかね。トイレには入らないこと。再犯はそういう場所で起こりやすいから。駅や電車もそうだけど、あなたは車を使うからその点は安心ね」

 結果を聞いたことで逆に少し落ち着いたような気がする。気をつけることも、考えていたこととあまり変わらない。一人で出かけるということ自体が少ないし、比較的安全な暮らしをしている。
(蓮がいる。いつだって一緒だ)
自分の護り神だ。蓮を見た。

「部長も分かってくれている。同じマンションで良かった。あのマンションはセキュリティがしっかりしているが何も無いとは約束できない。けれど俺がすぐそばにいる」
「シェパードくん。元々が会社が発端で始まったことだ。私も出来る部分は協力する。なんでも相談してくれ。君を転勤させることも考えた」

息を呑んだ。それでは自分は……死んでしまう、違う意味で。

「だがそれは危険を増すだけだと西崎さんに言われたよ。周りを知らないところで相田が君を追いかけて行ったら誰も何も出来ない。ここの方がかえって安全だ」

 息をしていなかったことに気がついた。ふぅっと息を吐いた。それを見て大滝も選択を間違っていなかったと思う。
 
 実は上では揉めていた。ジェイをいっそのこと休職させたらどうか。いや、辞めさせた方がいい。会社として明らかに犯罪の起きる可能性がある社員を抱えていることはリスクにしかならない。転職先を用意してやってもいいではないかと。けれど大滝がそれをねじ伏せた。

「ある程度のマスコミはこの事件の情報を追っているそうだ。本当に次の事件が起きればかえって批判を受ける事にもなりかねない」

 やり手の大滝は4月から常務取締役だ。だから発言力が大きい。なぜ大滝がジェイを擁護するのか。出来のいい社員というだけなら他にもいる。ジェイは一度人事ともトラブルを起こした。
 けれど、あのベッドに横たわったジェイの姿が頭の中に焼きついていた。痣を見た。すでに単なる一社員に見えない。保護する者も誰もいないのだと聞いた。そして理由はもう一つ……

「とにかく気をつけて。結局自分を守るのは自分だから。いいわね?」


「俺が残業の時は帰りが遅くなるってことでいいのか?」
「うん、それでいい。オフィスにいちゃいけないなら4階とかにいる」

遅くなるからと言って残業量を増やすわけには行かない。ただ会社にいるだけだ。

「分かった。お前に合わせて仕事するわけにも行かないからな。辛抱しろ」

 何かが起きるとは決まっていない。いつ起こるのかも分からない。まるで拷問のような日々が始まる。救いはすでに周りが知っているということだ。仕事に真面目に打ち込んできた姿、純粋で素直なジェイの姿もみんな知っている。だから守りたいという意識がみんなを強く結びつけていた。

 

 

 

 オフィスに入るとみんなの手が止まり、ジェイを見た。蓮が短く言った。

「釈放された。もう外に出ている」

広岡が呟く。

「何とかならないのかなぁ。分かってることなのに」
「気をつけるしかないんだ。会社と自宅は安心だから、後は個人的な予防をするしかない」
「ずっとこれからそれが続くんですか? 神経参っちゃいますよ!」

野瀬の言葉に怒りがこもる。
「弁護士が言うには、こういうケースで相田みたいなタイプは行動が早いだろうということだ」
「だって執行猶予でしょ? 何かやれば刑務所入りじゃないですが! それでやりますかね?」
「歪んだやつなんだよ。病気と同じだ。だから平気で街中で犯罪を犯す」

テレビでそんな事件は確かに見る。けれどいつだって画面の中だ。誰にとっても遠い世界だ。

 もう退社時間。気にかけながらも皆帰っていく。池沢のチームだけが残っていた。ちょうど花のシステムのことで打ち合わせがあった。

「課長、ちょっといいですか?」
「なんだ?」
「俺、考えたんですけど。今GPSを扱ってるじゃないですか、野瀬さんが試作してる。あれ、使わせてもらえませんか?」
「……ジェロームにつけようっていうのか?」
「そうです」

蓮が考え込んだ。

「あのGPSには試験が必要だ。中山が実際にどの程度行動を追えるのかを来週行うことになっている。先にやってみるか」

『行動が早いだろう』

 確かにみんながそれを聞いて緊張が走った。だが、誰も予測できなかった。まさかこの、釈放された日に相田が動くということは。

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