
宗田花 小説の世界
Fel & Rikcy 第3部[9日間のニトロ] 8- R
4日目
フェル……何もしてないよな? 大丈夫だよな? 話した方がいいのかな。これ以上隠しといちゃマズいことになるかも……
俺の過去。もうそんなこと言ってらんねぇ気がする。でも、もし話したら。もし、フェルや母さんたちに何かあったら……
夜遅くに来たフェル。起きてる俺をさんざんからかったり甘やかしたり、これでもかってくらい構ってくれた。
「やっぱりね、奥さま。起きてると思ったんだ。どうしようか迷ったけど来て良かった! 会いたくて堪らなくてさ。あの部屋でポツンと寝るのが無理だって、前にお前が言ってたことよく分かったよ。あの時はごめんな。もうあんな風にあの部屋に一人にはしないよ」
俺も会いたくて堪んなかった。だからそばに来た途端にその手にしがみついた。
「おい! 今、手引っかかったろ! 大丈夫か、見せてみろ!」
俺のちょっとの痛みで歪んだ顔も見逃さない。
「大丈夫だよ、ほんの少しだから」
「バカ、傷が開いたらどうするんだ。リズ、呼ぼうか?」
「騒ぎすぎだよ、いつも。俺、焦るよ。ホントに辛い時は自分で呼ぶし。それよりここ座って」
シーツをちょっと捲って座るとこを作った。にこって笑ったフェルが座ってすぐに俺の口が塞がった。たっぷりとフェルの口を味わう。俺の口をフェルが味わう。ああ……フェルならキスだけでイかせてくれる……
「だめ! おい、誘うなよ」
「フェルだって……ドキドキしてるじゃねぇかよ……」
「まだ早いって。せめてもう少し動けるようになってから」
「それなんだけどさ……退院、しちゃだめかな」
「退院? ダメに決まってるだろ! ゆっくり治せって言っただろ?」
「でも……もう熱もそんなに上がんなくなってきたし。それに」
「リッキー。僕の奥さま。ハニー。マイスウィート。頼むよ、大人しく言うこと聞いてくれ。せめて腰の痛みが引かないと連れて帰るわけにはいかない。それにこの手じゃ何も出来ないだろ?」
そうだけど。何も出来ない、こんなに包帯だらけで指も動かなくって。先生は、よく神経を切らなかった! って驚いてたっけ。そうなってたらもう料理だって作れやしない。奥さんの仕事出来なくなっちまう……
そして思ったんだ、もう話した方がいいんじゃねぇか、事件のこと。
「フェル、俺話がある」
「ん? 今じゃなきゃだめか? もう遅いしさ、僕も寝ないと」
時計を見たら2時近かった。
(そうか、バイト行くしな)
と思っちまった、そん時は。なんで俺、話すのやめたんだろう。やっぱり話すべきだったんだ。
俺が眠るまでベッドに座ったまんまフェルは髪を撫でてくれて、そっとあちこち唇で触れてくれて、そして眠りに落ちる寸前に聞こえたような気がした……
「お前のことは僕が片を付ける。お前は何も心配しなくていいんだ……」
5日目
「フェル、水」
「はい、奥さま」
いい気分だ。俺、ただ要求すればいい。
「体、拭いてほしい」
「はい、奥さま」
なんか、ホントにいい気分。夕べっからフェルが一緒。滅茶苦茶甘やかしてくれてる。バイトを休んだんだ、きっと。
あの話……寝る時に聞こえたフェルの言葉……今は聞きたくない、知りたくない。いけないんだ、ホントは確かめなきゃ。けど。もう少ししてから。後で。今夜とか。
「あのさ! 俺、どこにいりゃいいのかな!!」
そうだった、ビリーいたんだった。でも今日は甘えたい。時間がもったいない。俺、いっぱい甘えたいんだ、フェル。
「好きな所にいろよ」
おんなじ言葉、おんなじタイミング。フェルと目が合う。フェルの目が くすり って笑った。俺も笑った。
「見てる! やれよ!」
「やるさ、何言ってるんだよ」
フェルがビリーの言葉を受けて立った。でも俺だってホントにやるとは思ってなかった!! 今日のフェルは飛びぬけてハイテンションだ!
裸にひん剥かれて、ホントはビリーだけじゃなくって俺だって焦った。ビリーが慌てて廊下に飛び出したからホッとした。
「フェル、俺の方がびっくりしたよ!」
「リッキー、背中、すべすべのままだ……」
フェルが背中に唇を這わせるから思わず ……ぁはっ、…ぁう…… って声が漏れた。
「こら、外にビリーがいるんだぞ。声、立てるな」
そう言って、首から腰の下まで、ちが…もっと下…そんな……そこ……あ…声、出すなって……や……だ、め……
ふぇ ふぇる …… っあ、 ふぇる
「声、出すなよ」
耳のそばで囁く声……ふぇる……ぃ、く…………掴んだシーツにしがみつく………………
「まさかこれだけでイっちゃうなんて思わなかったよ! ごめんっ!!」
俺の息が切れてるからすっかりフェルは泡食ってる。体を拭くのにバスタオル敷いてあったからベッドは無事だ。でも…… バタバタ、フェルがタオルだなんだって走り回ってるのが可笑しい! 俺は拭いてもらいながら笑い転げた。
ぅ! まだ腰が痛い……フェルはそっと拭いてくれた。