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Fel & Rikcy  第3部[9日間のニトロ] 16 - (7日目:BRF)

  (Bの7日目)

 昨日はえらい一日だった。あんまり目まぐるしくって整理しなきゃ考えらんない。

 フェルの後を追っかけてモールに飛び込んだけど、そのせいでオルヴェラってのに逃げられたんだって思うと、悔しいのと申し訳無いのと。でも、その後でタイラーと落ち合ったら肩を叩いてよくやったって褒められた。

「あそこでフェルがそいつに何したか分かんないだろ? だからそれで良かったんだ。俺たちはあれこれ知っちゃいないが、フェルがおかしいことくらいは分かる。リッキーにも会ってやりたいけど、今はまずいんだよな。何でも助けてやるよ。お前にもシェリーにも、俺たちを好きに使ってもらって構わないんだ」

 エディとおんなじことを言ってくれる…… 涙が出そうなほど嬉しかった。

 

 心の中で順番に思い出してみる。

 逃げたオルヴェラを追っかけようと車に飛び込んだ俺の脇をフェルの車が突っ走って行った。もう追いつけないかもって焦ったけど、フェルはすぐに速度を落としたから何とか後ろを引っ付いていった。多分スピード違反なんてつまんないことでお巡りにとっ捕まるわけには行かないと思ったんだ。
 一見、理性が働いてるように見える。けど、どうもフェルの理性ってやつはいい方には働いてない。

 

「タイラー、俺たちモールを出た!」
『どこだ!? 今どこにいる?』
「現場に向かってフェルが走ってるからそれ、追っかけてる」
『どんな様子だ?』
「ありゃ、ダメだ。何したっておかしくない。犯人の一人が逃げたんだ。それ、探し回ってる」
『現場だな? 俺はモールの手前からUターンした。何かあれば連絡しろ!』
「分かった!」

 

 いきなりフェルの車が方向を変えた。病院の方だ。スピードを上げたから急いでハンドルを切った。タイラーに病院だ! って連絡して俺もスピードを上げた。
 イヤな予感がした。まさかリッキーの所? 結局その予感は当たっちまって、俺が病室に飛び込んだ時には足元に一人転がっていた。てっきりフェルが殺っちまったのかってゾッとしたけど、バカって言われてどんなにホッとしたか。

 オルヴェラをまた逃がしたけど、今度はそれより切羽詰まった問題があった。フェルの逮捕だ。叫び始めたリッキーに鎮静剤が打たれて、力が抜けていく体をフェルは抱き上げた。

 ずっと「愛してる」「愛してる」って、リッキーの意識が消えてもフェルは言い続けてた。俺はそれを見ながら泣きっ放しだった。

 病院からの連絡で警察が来たのはそれから10分くらいしてから。タイラーが着いたのは、ちょうどフェルがパトカーに乗せられた時だ。きっとタイラーとレイも事情聴取を受ける。そう思ってある程度の話をした。リッキーの国以外のことを。

 

 

 フェルの逮捕で気が抜けてボヤっとしてた俺はシェリーにどやされた。

「あんた、フェルに何か頼まれたんでしょ! さっさとやって来なさい! そうじゃないとホントにフェルは出てこれなくなっちゃうわよ!!」

 

 

 ブライアンに会うのは簡単だった。フェルは俺に携帯を預けたからそれで直接かけたんだ。フェルが携帯を隠しとけって言ったからそのまま俺が持ってる。確かにオルヴェラとか、これで連絡取ってたし。

 待ち合わせはブライアンのアパートの近く、小さなコンビニの裏にした。急に呼び出したのにそんなに待たせずに来てくれた。

「フェルは? 何かあったんだろう? 代わりに弟を寄越すなんて」

何も指示は無かったから、俺はある程度を話すことにした。

「さっき警察に逮捕された」
「え! なんで!」
「オルヴェラとディエゴって知ってる?」
「知らないけど……あ、二人組のスパニッシュか?」
「うん、それ」
「リッキーを襲った犯人だな?」
「その片っぽが病院にいるリッキーを狙ってきたんだ。それでフェルと揉み合ってるうちにナイフが刺さって、フェルが逮捕されたんだよ」
「リッキーは無事なのか?」
「無事だよ、今薬で眠ってる」
「そうか…良かった…それで? 何をすればいいんだ?」
「証言してくれって。その刺されたヤツ……背は俺っくらいでもうちょっと痩せてる。雰囲気は蛇っぽい感じ。そいつが現場でリッキーに言い寄ってたところを2回くらい遠目で見たって。リッキーの見えないとこでナイフ出してたって。それだけ言ってくれればいいって言ってた」

 

 本当にブライアンがそんなこと、証言してくれんのか。正直言って俺は信じられなかった。いくら仲良くたって、偽証罪になるんだし。

「分かった。君より少し小さくて痩せてる。そいつがリッキーに言い寄ってるのを…現場の4階がいいな…そこから見かけた。最初はチラッと見ただけ。2度目は…リッキーが背中を向けた時にナイフを出して、上から見てる俺に気づいて逃げた。こんなところかな?」

 呆気なく引き受けてくれて筋書きまで組み立ててくれたから驚いた。

「いいの? ホントに?」
「フェルにはね、感謝してもしきれないくらいなんだ。妹を助けてもらった。フェルが妹のことを任せろって言ってくれたんだ。俺のことはきっと許しちゃくれないだろう。その二人組にリッキーが今一人だって連絡したのは……俺なんだよ」

……驚くことばっかりだ。

「なのに彼は妹を助けてくれた。だから何でもする。今のことだけでいいのか?」
「それでいいよ。ありがとう、ホントに。俺の兄貴、助けてくれる人がいっぱいいて嬉しいんだ。ありがとう」

 リッキーが襲われる原因を作ったヤツなんだけど、俺には悪いヤツに思えなくて。なんか、涙まで出て来ちまって。

「それは彼が真っ直ぐに生きてるからだろう、多分。リッキーのためなら何でもする、後はどうなろうと知ったことじゃないって言ってたよ。羨ましい、そこまで思える相手がいるって」


 そして今日、現場の連中を調べていた弁護士の助手がブライアンを見つけたんだ。

 レイは休まずに現場に行ってくれてる。
「タイラーは家庭持ちだからな。そう無理は言えないが俺は自由人だからこっちは任せとけ」

 ロジャーって人は、警察関係に知り合いがいるからってこっそりフェルの様子を調べてくれた。結構キツいことされてるみたいだから、リッキーに話しちゃマズいって思ってる。

 ピートって刑事はどうしてもフェルを正当防衛にしたくないらしい。でも周りの話は全部その方向で辻褄があってるから釈放は間違いないだろうって話だ。弁護士のフレデリックは「これは事故だよ」ってその線で押すって言ってた。
 ロイはよく分かんない人だ。リッキーのことすごく気にしてくれてるけど、動いてる様子が俺にはよく分かんないんだ。エディはこのチームは全員心配無い連中だって言ってくれたけど。

 

 

 

  (Rの7日目)

 

 朝になって、キャシーからディエゴが死んだって聞かされた。そこに来たリズがキャシーを睨みつけた、まだ俺に伝えるのは早いんだって。
「正当防衛なんだから殺人罪にはならないわよ」

って言われて、俺がただ母さんの体に掴まってガタガタ震えてるところに刑事が来た。ピートってのと、トムってのと。

「話、聞かせてもらえるかな?」
今日はピートだけ喋るらしい。トムは後ろの方でムスッと立ってる。
「君を最初に刺した男のこと、思い出した?」
震えながら頷いた。俺の言うことでフェルのこの先のことが決まるのか?

「その話、してもらえるかな。最初から全部」

 

 俺はフェルの言ってたことを思い出しながら話した。時々あいつがなんか言ってきたけど気にしてなかったこと。鬱陶しかったこと。知らないヤツだってこと。名前さえ知らねぇ。ここに飛び込んで来たからそれではっきり顔思い出したこと。ナイフが俺に向けられたこと。ちょうど入って来たフェルが俺を守ってくれたこと。

 『飛び込んで来たフェルが』
 そう言いそうになって『ちょうど入って来たフェルが』って言葉に口ん中で言い換えた。飛び込んで来たなら何が起きてんのか知ってたってことになっちまう。

 

「最初に君を刺したのはあの男、一人だったのは間違いない?」

俺はしっかり頷いた。

「うーん……傷口から言って犯人は複数のはずなんだけどな……それでその時にフェリックスのお母さんとお姉さんが一緒にいたんだね?」
「母さんが俺を庇ってくれたんだ、シェリーも一緒に」

ピートは何度か頷いた。

「最初にナイフを持ってたのはあの男? フェリックスじゃない? フェリックスは当然犯人を憎んでたんだろう、機会があれば殺すつもりだったはずだ」
「フェルはナイフなんか持っちゃいねぇ! 俺が危ないのを見て間に割って入ったんだ、自分のことなんか考えねぇで!」
「ああ、そうだったね。彼はたまたま入って来て、あの男と揉み合ったんだった。興奮しないで。確認してるだけだから。犯人は死んじゃったからね、こうやって周りの証言を取るしかないんだよ。でもみんな身内の人だ。ナースも誰も現場を見ていない。君をその男が狙っていたという事実さえ分からない。ちょっと状況は不利かな」
「不利……って?」

 

 ゾッとした。どういう意味だよ、なんでそんなに突っかかんだよ。

「まず、君があの男につけ狙われていたということを示す証拠も証人もいない。だから君を襲ったのが一人だって言ってるのは君だけなんだ。あいつには……ディエゴっていうんだけど、いつも一緒にいたオルヴェラっていう仲間がいたんだよ。その名前、心当たり無い?」

その名前が出て、途端に俺の心臓が駆け出しそうになった。けどフェルのことは俺の証言にかかってるんだ。

「知らない。聞いたことない。だいたいそのディエゴってのに仲間がいたってことさえ知らない」
「そうか…そいつは今行方不明だ。どんな些細なことでも知ってることは全部話してほしいんだ。君を刺したのは本当にディエゴだけ? この事件に絡んでることが他にもあるんじゃないか? せめてディエゴが本当に君を狙っていたっていう証拠くらい無いのかな」

 そんな、そんなこと、あの時フェルは目撃者がいるって言ってた。そうだ、目撃者がいるって。

 

  ――お前は知らなくていい


そう言った……

「彼が有罪になったらどうする? 何せ殺人罪だからね、しばらくは帰って来れない。この場合のしばらくっていうのは、何年もって意味だよ。だからどんな些細なことでも知ってることは全部話してほしいんだ。君はトゥキディデス教授の従妹の息子なんだってね。ちょっとつき合っていたスペイン人との間に君が生まれた。すぐにお母さんが亡くなったから教授の別の従妹が君を引き取った。ディエゴの身元は分からないんだよ。どこの出身か調べてるんだが。相手も君もスパニッシュだろう? 本当に接点、無かった?」

 頭がぐらぐらする……どこまで返事すればいい? どこまで返事しなきゃなんねぇんだ?

 

「刑事さん、その辺にしてもらえませんか? ずいぶん悪どい尋問だね。相手が素人だから違法でも構わないということかな?」

入り口に立っていたトムを押しやって知らない男が入って来た。

「あなたは?」
「フレデリック・スミス。フェリックス・ハワードとリチャード・ハワードの弁護士です。今後は私のいない所での事情聴取はお断りします。リチャード、それ以上話さなくていい。今日は見逃します。次はそうはいきませんよ」
「やれやれ、おい、ピート。どうやらまともな弁護士のようだ。この件は俺の言った通りさ。ゲイの修羅場ってやつ」

ピートを残してトムがさっさと出て行った。
「僕は納得しちゃいないからね、リチャード。何かがおかしい、そう思ってる。また来るよ」
そう言葉を残してピートも出て行った。

 本当にほっとした。ハラハラしてた母さんがすぐに水をくれた。冷たいタオルを顔にあててくれる。

「あの、フェルは」
「ああ。さっき会ってきたところだ。フェルにも何も話す必要は無いと言ってきたよ。今後は全て私が対応する」
「元気ですか!? ケガ、してんです。俺、会える?」
「元気だったよ。ケガも大丈夫そうだ。すごく落ち着いていたよ。そうだね、あの刑事が引っかかるというなら、あの落ち着き方のせいかもしれない。普通はもっと騒ぐからね。君が会うのは無理だ。拘留中は私しか会えない」
「それっていつまで?」
「拘留できるのは48時間なんだよ。はっきり事件性を証明されればそのまま訴追されるだろうが、多分時間切れで不起訴処分になるだろう。訴追出来なきゃ話にならないんだから。この状況証拠だけで殺人罪に追い込むのは無理がある」

 

 フレデリックという弁護士は母さんと握手した。50歳位に見える。しっかりした人だ。なんとなく俺が胃潰瘍だった時に世話になったジャクソン先生に似てる。

「ありがとう、フレッド。ジェフも今夜にはここに来るって言ってたわ」
「ええ。大丈夫、この件はすぐに片付きますよ。警察は知らないがもう目撃者を見つけましたからね。リチャードがあのディエゴという男につきまとわれていたと証言してくれる男をね」

え? 誰? そんなこと言ってくれるやつに心当たりなんかない。
「あの、それって……」
「ブライアン・ヒルズという男を知ってるね?」
「はい…」
「彼が見てたんだよ、君があの男につきまとわれて困っていたところを。2度見かけたと言っていた。その2度目は君は知らないだろうが、真後ろでナイフを取り出していたそうだ。作業現場の4階から見下ろしたところに君たちがいたからよく見えたと。ディエゴはブライアンに気づいてナイフを隠して逃げたらしい。それが君が刺される前日の話だよ。ディエゴは君に掴みかかったそうだね。それは覚えてる?」

 どうしてそういう話になってんのか分かんなかったけど俺は覚えてるって答えた。

「ブライアンは君たちの問題に立ち入りたくなかったらしい。だから黙っていたけど済まないと伝えてくれって言ってたよ。ちゃんと証言すると言ってくれた。これから彼を警察に連れて行く」

 

 俺の驚いた顔は本物だったから、フレデリックも何も疑ってない。ブライアンが? フェルはすぐに逮捕されたんだからそんなことブライアンに頼めるはずがねぇ……第一、なんでブライアンが協力してくれてんだ?

「じゃ、フェルは? 48時間って、明日?」
「そうだよ。大丈夫。釈放させてみせるから。さっきの刑事の言ったことは気にしなくていい。真に受ける必要は無いからね。身内の証言も立派な証言だ。ましてこれだけの人数が同じことを言ってるんだからそれは引っ繰り返せないよ」
「ホントに? フェルは帰ってくる?」
「明日の2時には彼は帰ってくるよ、安心しなさい」

母さんが肩を抱いてくれた。でも、俺が安心すんのは、きっとフェルの顔を見てからなんだ。

  (Fの7日目)

 しつこい。こいつ、やっぱりしつこい。

「だからね、フェリックス。僕にはどうしても分からないんだよ。なぜオルヴェラが行方不明なのか、なぜリッキーを刺したのが一人なのか。そしてもう一つ。ディエゴは本当に自分で自分を刺したんだろうか?」

「同じことを聞かれても同じ返事しか出来ません。オルヴェラという男のことは知らない。現場を見てたわけじゃないから何人が刺したのかも分からない。あえてそこで言わせてもらえば、他にも犯人がいるってことなら今度こそこの手で殺してやりますよ。ディエゴをこの手で殺せなくて残念だと思ってるんですからね。彼が自分で刺したんじゃないと思ってるんなら、好きなように僕を犯人に仕立て上げればいいじゃないですか」


 ずっとこの調子で2時間。昨日は逮捕されてから延々4時間尋問を受けた。堂々巡りの話の中で僕の言葉に矛盾が出て来ればそこを突っつこうって腹なのは分かっている。ピートは厄介だ。これがただの事件じゃないと何かを感じ取っている。
 そして今日は朝飯を食ってから2時間。時計を見ると10時過ぎだ。


「これから病院に行くんだよ」
どういう顔が一番相応しいんだろう?
「何しに?」
いぶかし気な顔。それが良さそうな気がする。
「リチャードに会いにね。彼だけ事情聴取が済んでなかったからね。だから聞きに行くんだよ、最初っから全部ね」

 リッキーが耐えられるとは思えない……きっと取り乱している。

「あいつはまだ具合が悪いんです。あまり無理させたくない……」
「もちろんだよ! ちょっと聞くだけさ。君の言ってることを確認するためにね。彼をどうこうするつもりなんか無いよ、被害者なんだからね。けど……彼はきれいだね。ずい分罪作りな容姿をしている」
「セクハラですか!? リッキーを侮辱する気なら」
「君、彼が絡むとキレやすいね。本当に目の前にいたら刺しそうだ」

 にやりと笑われて(しまった!)と思った。つい腹が立って。このところ自制心っていうものが消えかけている。

「帰ったらまた取り調べをするから。それまでゆっくりしていてくれ」

 


 居ても立ってもいられなかった。僕がそばにいれば幾らでも守ってやれるのに。大丈夫だろうか、あの話、ちゃんと呑み込んでるだろうか。いろんなことがあり過ぎてきっと冷静じゃいられないだろう。オルヴェラをモールで仕留められなかったのはやっぱり失敗だった。
 そんなことを考えている時に弁護士が接見に来た。


 力のこもった握手。フレデリック・スミスはさすがジェフの見込んだ弁護士だけあって、誠実さと熱意に溢れた人だった。

「フェリックス、ジェフから君のことはずいぶん聞かされていたんだ。中々の好青年だってね。しかも度胸がある」
「ありがとうございます。でもジェフは僕を買い被っているんです」
「そうかな? 彼とは若い時からずっと一緒にやってきた。ああ見えて彼は決して甘ちゃんじゃないんだよ」
「そうですね。だから安心してるんです、母のことを大事にしてくれるって」

フレデリックが口を閉じて僕をじっと見た。何かマズいことでも言ったか?

「君は落ち着ているね。怖くないか? ここが」
「何もしてませんから。リッキーのところに帰れると思ってます」
「そうか……ちょっと証言に矛盾があったね。最初君は自分が刺してしまったと言った。でも揉み合っている内に彼が自分で刺したんだよね。どうして自分が刺したと言ったのかな?」
「あれは……」

そうだ。あれが一番の失敗だ。咄嗟に言った言葉が悔やまれる。

「あれは混乱してしまったんです。てっきり自分が刺したものだとばかり。少し気を失いましたしね、みっともないけど揉み合ってる最中に」
「そうか。それなら問題は無いんだが。もう少し何か押しが」

その時に彼の携帯が鳴った。

「私だ。ん。ん。そうか! それで? ああ、分かった。じゃ、彼に来てもらえるように話してくれ」

こっちを向いたフレデリックの顔が明るかった。

「目撃者がいたよ。リチャードが脅されているところを見た者が見つかった。彼の見た男とディエゴの特徴が同じだそうだ。ディエゴは一人だったらしいし、後ろからリチャードを刺そうとしていたのを見たらしい。その時にはディエゴは何もせずに逃げたとのことだよ」

良かった、ブライアンが間に合った! これで後は上手く行く。

「Mr.スミス」
「フレッドでいいよ」
「じゃ、フレッド。実はここの刑事がついさっきリッキーの事情聴取をするって出て行ったんです。彼が心配で……」
「分かった、すぐ行こう。君ももう取り調べには応じなくていい。全部この私を通すように言うんだ。権利だからね、明日には君は自由になるよ。じゃ、また来る」

 

 やっと目途が立った。これでリッキーの傍に帰れる。大丈夫か? お前が心配だよ…… 絶対にお前を守るからな。指輪も取り返してやる。待ってろよ。

 

 

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